おかかとこんぶ

新潟にいる人。映画と本と家ごはんが好き。

発酵に学ぶ

5月1日。令和になりました。

長い長いゴールデンウィーク…になるまでブログを書けずにいて、ちょっと悔しい。また1カ月空いてしまったー。今年も走りに走る年になりそうです。

 

さて、先日、長岡でトークイベントがありました。社会情報学者のドミニク・チェンさんを迎えた、「発酵とまちづくり」をテーマに長岡のこれからを考えて行こう、というトークイベント。

昼間、とっても晴れてあたたかく、公園でピクニックしたら日光のあたりすぎか少し頭痛い中での参戦(笑)

 

ドミニク・チェンさんは社会情報学を研究し、早稲田大学の教授でもある方。

wired.jpウェルビーイング」(幸福度?というような意味合い)の研究もしていて、こちらの記事もとても興味深い。「ぬか床」を研究もしているという、なんだか一言ではやっていることを説明できないような方でした。

 

今回のイベントは、そんなドミニク・チェンさんと「体験ギフト」を提供しているソウ・エクスペリエンスの関口さん、そして長岡造形大学の理事長、水流先生の3人の対談がメイン。

www.sowxp.co.jp

ちょっと頭痛かったのもありメモもとっていなかったのですが、ドミニク・チェンさんの話が面白かったので2つほど記録がてらこちらに書きます。

 

1.必要ない菌が必要

 

ひとつめは、ひょんなことから「ぬか床」に魅了され、マイぬか床をめちゃめちゃに愛しながら発酵の研究もしているチェンさんが、発酵デザイナーで有名な小倉ヒラクさんとたどり着いた最近の研究結果のこと。

 

「ぬか床における発酵とは、主に乳酸発酵のこと。これには乳酸菌が一番大切で、そのほかの乳酸発酵に必要ない菌はまずはだんだん減っていく」

「ピクルスくらいの発酵状態では、とにかく必要ない菌は減っていくが、」

「熟成したぬか床には、乳酸発酵のためには必要なかったはずの菌たちがまた増えてきている」

「これらの『乳酸発酵に直接必要なわけではない菌』たちも美味しさに一役買っているのでは」

という研究結果だった。

これは確かにおもしろい。「まちづくりと一緒だ」って結びつけることにもはや少し飽きてきたけど(笑)、でも多様性ってそういうものだ。

「直接必要かどうか(価値があるかどうか)わからないものが共存しているということ」。だと思う。

まちも本当にそう。人生もそう。仕事ができる人ばかりじゃなくていい、お金稼げる人ばかりじゃなくていい。失敗しちゃった人とか、苦悩した人とか、人としゃべるのが苦手な人とか、もっと言えば日本語しゃべれない人とか、勉強できない人とか、子供いない人とか、全員、いていい。いた方がいい。

それでみんなが完全に自分勝手に生きるんじゃなくって、少しずつ手をさしのべたり歩み寄ることで、美味しいぬか漬けみたいなものができるんじゃないだろうか。

GSシェアハウスやイナカレッジはそういう人たちが来れる場所にしたい。

そういう弱い部分を持った人が、「ここなら居れる」という場所がいくつもあるまちでなければ残っていかないと思う、文化も人も。

「管理しきれないことが大事」という言い方もしていた。「管理すればいい」って考え方が逆に危険なのかもしれない。

 

2.自分の心も生態系

もうひとつ、チェンさんがそんなに長くは話さなかったけれどとても印象に残っている話がある。

それは、「同時に多様な感情を感じたほうが幸福」という研究結果のこと。

だから、to do リストじゃなくてto feelリストを作った方が面白いんじゃないかって。

「あー最近恥ずかしいって感情抱いてないな」って思ったら恥ずかしい感情を感じられるようなことをする、みたいなのがto feelリストらしい。

「自分の心も生態系でぬか床みたいなもの」ってことかあー。面白い。

なんというか、負の感情、悲しいとか辛いとか寂しいとかって、感じなければ感じないほど幸せかと思いきや、そうじゃないんだ。

負の感情が深く味わいある音楽や映画などの作品を生むように、それがある方が熟成された良い心をはぐくむのかもしれない。

まあ、実際「恥ずかしがりにいこう!」「寂しくなりにいこう!」というのはちょっと不自然というかそれはもう少し偶然でいいのかもしれないけれど、

たぶん、心を動かさなくなる方の方が問題なんだ。ひとつの感情にとどまっていることの方が不健康なんだろう。

そんなこと言われたら、目の前のすべてのことが少しだけ怖くなくなる気がする。だってどんな感情を抱いたとしても、自分の心を熟成させることにはつながるんだもの。

ずっと負の感情は嫌だけど(私の場合それはなさそうだけど)、負の感情も受け入れられるといいな。

 

***

 

結局発酵って、人間のすることは「環境をつくって待つ」ことだけ。

発酵という現象が起きて発酵食品ができるのって、ほとんど自然の(菌の)チカラ。

これは私、地域でのプロジェクトや大学生のサポート(キャリア的なこと)をするときにもとっても共通することだなと思っている。

環境をしっかり整えれば、あとは一人の人間のチカラで何かしようと思わない方が、環境(ぬか床)の中ののたくさんの要因が絡み合って関わって素敵なものはきっとできる。

だからこそ「環境」は大事で、そこはしっかり質のよい環境にする。プロジェクトだって、人生だって、学生生活だって、きっと何をするかそのものより「まわり」が大事だ。

何をやりたいかが分からなくても、良い環境の中にいれば、つくっていれば、いつか発酵という現象は起きる。

それを令和はもっと実現して、もっといろんな人と共有できるといいな。

 

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(西会津で食べた、おかゆのおとも)